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【現代ビジネス研究所・研究助成金採択プロジェクト】燕三条地域の加工技術とグローバル優位性~産業集積を支えるものづくりのDNAを探る

燕研修振り返りミーティング

現代教養学科2年の松田歩美(まつだ・ふみ)です。

燕研修の4日目(2022年8月11日)と終了後、9月12日に昭和女子大学で行った振り返りミーティングについてご報告いたします。

 

ミーティングの様子

撮影:川崎保弘研究員

 

燕研修の4日目(最終日)にはプロジェクトリーダーの根橋玲子研究員と研修に参加した学生の3人で全体のまとめを行い、新鮮な意見交換をすることができました。

後日、東京で行ったミーティングでは、燕研修に参加できなかった学生や研究員の方を交え、研修の報告に加え、燕地域について活発な意見が多く出て、私自身も考えをさらに深めることができました。

今回は2回のミーティングを通して出た意見やそれに対する私の考えについてご報告させていただきます。

 

燕地域の特性

 

燕地域には金属加工に関わっている多くの中小企業があります。そして燕ブランドは国内外に技術の高さを認められています。なぜ燕地域はここまで高い評価を受けているのでしょうか。

その理由のひとつに、燕の人々の自己プロデュース力が高いことがあげられると考えます。

今回の研修を通して、燕の皆さんは自分たちがどのようなことができるのかを把握し、それらを外部に広めること、後世に伝えることを特に意識していると感じました。また、常に技術の研鑽も怠っていません。

 

つばめいとの地域への影響

 

そんな燕地域の支えとなっているのが「つばめいと」です。

つばめいとは公益社団法人として、燕地域の企業に新潟県内外の大学からインターンシップに訪れた学生の拠点となる、燕産学共創スクエアを運営しています。燕地域の企業と大学生のマッチングをすることで、インターンシップを通じて大学生を採用する企業が増えるほか、大学生に燕地域の良さを知ってもらい、将来就職する企業と燕企業のマッチングにつながるという狙いがあります。

また、燕産学共創スクエアは商店街の一角に位置しており、その商店街の活性化事業の中心にもなっています。定期的に会議をし、燕産学共創スクエアの前でイベントを行うなど、つばめいとは企業と学生のマッチングだけでなく、地域連携にも貢献しています。私たちも研修で会議の様子を見学させていただいたのですが、商店街でお店を経営している方だけでなく、地域の学校の先生など、さまざまな立場の人々が集まり、意見交換をしていました。

これらの活動の他にも、つばめいとは燕地域の金属加工技術という財産を中心に、地域の連携を深める活動をしています。地域の企業と深い繋がりを持つことで、燕地域の特性を理解し、それらを外部へプレゼンする立場の組織があることが、燕地域のブランド力を高めていると考えます。

                                                              

燕企業の意識の高さ

 

つばめいとという組織があることで、燕地域の自己プロデュース力が高いと書きましたが、自己プロデュース力の向上に貢献しているのはつばめいとだけではありません。金属加工に関係する企業の方々の意識も大きく影響しています。振り返りミーティングでは特に株式会社カンダと株式会社新越ワークスについて活発に意見が出ました。

 

株式会社カンダは燕地域で作られた製品を各地へ出荷している商社です。日本国内だけでなく、中国にも中華食器や調理道具を卸しており、中国向けのブランドラインもあります。

研修では会社の概要について担当者の方が説明してくださり、社長の神田智昭(かんだ・ともあき)様にも私たちの質問に答えていただきました。カンダでは卸し先であるホテルや中華料理屋の要望を細かく聞き、それに合う燕産の金属加工品を探してきて卸しています。オフィスに併設されているセレクトショップのハイグレードストアの見学や、社長のお話からも、燕の工場に対する理解と燕に注文を持ってくるなど、地域への責任感を感じることができました。

 

また、新越ワークスは燕地域内でも規模の大きい企業で、ざるなどの金網の加工を中心に製作しています。研修ではつばめいとの運営する宮町シェアオフィスで山後隼人(さんご・はやと)さんにお話をお聞きしました。会社とその技術に対する熱意を感じることができました。振り返りミーティングでは新越ワークスは昨年4月に就任した、現社長の山後佑馬(さんご・ゆうま)氏まで3代続く、創業家が経営する会社であることから、企業理念が後継者に脈々と継承される創業家経営の強みや、燕地域での事業承継の話になりました。新越ワークスでは会社の技術や経営に対する信頼や、熱意が継承されているという印象を受けました。

 

まとめ

 

今回の研修を通して、燕地域の繋がりの深さを実感しました。それはつばめいとの存在や地域の企業それぞれの考え方などに起因しているのではないかと考えます。

海外に燕の技術を発信するという点でも、このような地域のつながりや取り組みは製品のストーリーとして魅力的です。また、燕市産業史料館の主任学芸員である齋藤優介(さいとう・ゆうすけ)さんからも歴史的燕地域の金属加工技術の歴史的背景についてお聞きすることができたので、それらも交えた燕地域のストーリーがまとまると、観光地としてもさらに魅力的な地域になるのではないでしょうか。

今回の振り返りミーティングを通して、燕地域への考察が深まりました。今後のプロジェクト活動では更なる可能性の追求や、他の地域への調査、考察をしたいと考えています。

 

現代教養学科2年 松田歩美