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【現代ビジネス研究所・研究助成金採択プロジェクト】燕三条地域の加工技術とグローバル優位性~産業集積を支えるものづくりのDNAを探る

燕研修3日目

現代教養学科2年の松田歩美(まつだ・ふみ)です。

燕研修の3日目(2022年8月10日)のご報告をさせていただきます。

この日は株式会社玉川堂を訪れ、その後は、つばめ産学共創スクエアにて、燕市産業史料館主任学芸員の齋藤優介さんに講義をしていただきました。

 

株式会社玉川堂

 

株式会社玉川堂(以下、玉川堂)は銅を叩いて成形する、鎚起(ついき)銅器を製作している企業です。

金属加工産業が盛んな燕地域の中でも歴史がある企業で、長年燕の産業を支えて来ました。

玉川堂のHP 無形文化財 鎚起銅器「玉川堂」- GYOKUSENDO 

https://www.gyokusendo.com/

まず、県の有形文化財にも指定されている築100年の工場を「番頭」の山田立(やまだ・りつ)様に案内していただきました。

燕地域の金属加工の歴史から解説してくださり、燕と玉川堂の深いつながりが感じられました。

また、実際に作業している職人さんを目の前で見学させていただきました。職人さんは集中して作業されていて、一心に作品に向き合われているご様子でした。

(作業場の様子:松田歩美撮影)

実際に銅板や道具、着色用の薬などを見せて頂いて、製作過程がとてもわかりやすかったです。手前左の方は玉川堂の匠長で、人間国宝玉川宣夫氏の長男、玉川達士伝統工芸士とのことを伺いました。

(着色用の薬:松田歩美撮影)

(1枚の銅板から急須が作られる様子の説明:松田歩美撮影)

工場の見学を通して、職人の皆さんは見学者に慣れておられるようで、仕事に熱中されていたのが印象的でした。見学のあとは工場の2階で山田様にお話をお聞きしたのですが、そのお話の中でも、工場の見学を観光に繋げる、クラフトツーリズムに今後は力を入れていきたいとおっしゃっていました。

玉川堂だけでなく、燕全体でクラフトツーリズムに力を入れていくと、地域全体の活性化に繋がるのではないかと思います。しかし、玉川堂と同じレベルの見学の受け入れ体制を、別の企業が整えることは困難かもしれないとも感じました。

 

齋藤優介様によるご講義

 

午後は燕市産業史料館の主任学芸員である、齋藤優介(さいとう・ゆうすけ)様に講義をしていただきました。

燕の産業がどのようにして発展してきたのかについて分かりやすく解説していただきました。燕の土地の特徴から始まり、地形と産業の関わりについて深く学ぶことが出来ました。

私は、産業史が単なる過去の話ではなく、現在に繋がる大切な情報であると感じました。現在、燕にある産業がなぜ今の姿になっているのかを知ることが、今後の燕における産業について考える上で必要なことと思います。

講義のあとは、実際に燕市産業史料館を訪れ、齋藤様に展示について解説していただきました。

燕市内だけで多種多様な製品が作られていて、それぞれの技術の研鑽をこのような形で理解すること自体が燕市の重要な財産であると感じました。

また、齋藤様は燕の産業振興のため、ファクタリウムという事業のコンシェルジュ(案内人)を務めていらっしゃいます。燕地域の技術を世界各国の企業に向けて発信し、そのマッチングをされています。

FACTARIUM – ファクタリウム https://factarium.jp

齋藤様のお話や史料館の展示から、こうした「知」による支えも、燕の金属加工が現在の形まで発展した要因の一つなのではないかと思いました。

 

燕地域について

 

この4日間の研修を通して、私は燕地域には成長を望んでいる方が多いと感じました。

玉川堂の山田さんには、燕地域全体のクラフトツーリズムについて、現状の問題点や可能性を、また、主任学芸員の齋藤さんには、燕地域の今後のブランディングについて熱くお話しいただきました。1日目、2日目にお話を伺った方々も、燕地域の未来について深く考え、行動に移していらっしゃるように感じました。

ところで、燕地域の金属加工を中心とした産業は、伝統や現状の技術には満足していない印象を受けました。

それはつばめいとの活動に顕著に表れています。インターンシップや商店街におけるまちづくりによって、新しい知見や繋がりが生まれ、日本の地域にありがちな閉鎖的な雰囲気が取り払われ、地域全体が成長しているような活気を感じました。

また、地域の方々がそうして一体となって成長に向かって活動しているのは、金属加工産業という柱があるからだと思います。例えば、2日目の昼食にいただいた燕背脂ラーメンは工場の職人さんが残業の際に食べるため、のびにくい極太麺です。作業で手が離せず、食べるのが遅くなっても丼全体に背脂がかかっているために冷めにくくなります。このように、燕のソウルフードも金属加工産業の影響を受けています。この地域の方々にとって工業は生活に非常に密着していると言えるのではないでしょうか。

地域にとって一つの柱があることは、その地域の発展において重要な条件なのではないかと思います。今後は、産業の柱がどのようになっているのかをさらに分析し、今後の産業と地域の関係の在り方について考えていきたいです。

 

最後に、3日目の研修でお世話になりました、株式会社玉川堂番頭の山田立様、燕市産業史料館主任学芸員の齋藤優介様には、心より御礼申し上げます。

 

現代教養学科2年 松田歩美