地域貢献活動
【現代ビジネス研究所・研究助成金採択プロジェクト】地域の加工技術とグローバル優位性(金沢の地場産業調査)
工芸のまち 金沢ー金沢クラフトビジネス創造機構の取り組み②ー
こんにちは。現代教養学科 4年 近藤菜々子です。
前回の「金沢クラフトビジネス創造機構」の取り組みに続き、金沢市での職人支援や
海外展開への展望についてお話しします。
1.金沢市で後継者を支援する仕組み
金沢市ではふるさと創生1億円事業(1988-89年)が行われた際に、文化に携わる方々に奨励金を出すための基金を作りました。これは現在も継続されており、毎年金沢市の予算をもとに基金を増やしています。基金は工芸の後継者育成のため、まだ弟子の段階の人やこれから工芸を始める人に対して、月に一定額を3年間支給し、技術の研鑽のための費用に充てられるようにしています。(金額は対象者によって異なります。)
2.「dining gallery 銀座の金沢」について
東京の銀座には、クラフト機構が運営する「dining gallery 銀座の金沢」があります。ここでは金沢の工芸品の展示、販売を行っています。展示内容は若手作家を中心としてやテーマを2週間ごとに入れ替えています。ここに訪れるお客様は金沢の工芸品に強い関心を抱いている方が多く、展示会の初日から特定の作家さんの作品をお目当てに訪れる方もいらっしゃるそうです。「dining gallery 銀座の金沢」でもかつて「金沢卯辰山(うたつやま)工芸工房」や「金沢美術工芸大学」等で学ばれていた方同士でのネットワークがあり、交流が盛んなようです。
写真1: 「dining gallery 銀座の金沢」手前がショップ、奥がダイニングとなっている。
(撮影時は、酒器展が開催されていた。)
出所:根橋玲子研究員 撮影
3.外資系ホテルと地域の連携
2020年8月1日に金沢駅前側に「ハイアット セントリック 金沢」がオープンしました。このホテルは、インバウンド外国人のお客様に宿泊して頂くことを想定した外資系ホテルです。ホテル内のロビーやレストランそして各客室には、数多くの工芸品が置かれています。また、観光客向けとしてそれらの工芸品を紹介する冊子が作成され、閲覧できるようになっています。
近年ではこのように、外資系ホテルと地域が連携するスタイルがよく見られるそうです。新木さんは、外資系であり全世界からお客様が訪れるというこのホテルの特性を生かし「ハイアット セントリック 金沢」の場所をお借りして、若手作家の展示会を開催するなど、今後の取り組みの場として活用させていただくことで、金沢の工芸品に触れてもらえるチャンスが増えるとお話し下さいました。
4.昨年度から行われている燕プロジェクトの連携先である「台湾」について、
金沢との現時点、そして今後の連携の見通しについて
工芸品に限らず、日本独自の文化やものの価値観を海外に伝えるための工夫は、常に求められます。金沢市でも観光パンフレットなどで、英語と日本語の併記や伝統工芸品に関する説明文の翻訳ガイドラインを作成しています。しかし、伝統工芸品特有の表現をいかに正確に伝えられるかが課題となっているようです。
台湾には日本のおでんや味噌などがあり、日本語を話せる方も多いため、日本とのギャップが少なく、テストマーケティングに向いていると言われています。金沢市についての台湾からのイメージとしては「金沢」や「八田与一(はった・よいち)」(八田与一は金沢市出身で、台湾でダムを造ったことから有名です。) といったキーワードで、イメージが確立されています。
新木さんによると、既に台湾とは連携している部分もあるそうです。台湾で5月に行われた「八田与一」の墓前祭の際には、台湾三越で展示会の実施や職人さん同行のもとで加賀友禅の染色の実演などが行われたそうです。
銀座にある「dining gallery銀座の金沢」にも台湾の方が来て、工芸品を大量に購入されているそうです。中でも金工や台湾にはあまりないガラスが人気だそうです。
このお話から、単に海外に日本の工芸を広めるだけでなく、地域ごとの生活様式や日本に対するイメージのリサーチやその後のアプローチが必要であると感じました。
今回のヒアリングを通して、これまで工芸に対して抱いていたイメージが変わりました。また、クラフト機構のような「繋ぎ手」との連携によって、工芸品の販売や作家養成が活性化されていることが分かりました。
今後の活動では、工芸品の作家さんやショップ、工芸作家研修施設の方々に直接ヒアリングを行い、何ができるのかを探っていきたいと考えています。
(現代教養学科4年・近藤)