地域貢献活動
【現代ビジネス研究所・研究助成金採択プロジェクト】地域の加工技術とグローバル優位性(金沢の地場産業調査)
卯辰山工芸工房③―研修者の思い―
こんにちは。金沢プロジェクトの現代教養学科4年近藤菜々子(こんどう・ななこ)です。
今回③では「金沢卯辰山工芸工房」で現在研修を受けている作家さん2名に対して行ったインタビューを紹介します。今回の研修者の方々へのインタビューは、川本さんのご厚意によって実現いたしました。通常の視察では研修者の方々にお会いしインタビューすることはできませんのでご注意ください。
1人目は漆芸作家の中田真裕(なかた・まゆ)さんです。卯辰山工芸工房での研修は3年目になります。この工房を選んだ理由は、金沢のイメージ=21世紀美術館、現代アートがあったからだそうです。そのほかにも、「ユネスコ創造都市」に認定され、「世界工芸都市宣言」をしており、世界と繋がってクラフトを考えている人が世界から集まるので、最先端の話が聞けると考えたからだそうです。
中田さんは初め、製薬会社で営業職をなさっていました。しかし、製薬会社勤務では退職年齢も決まっており、転勤も多かったそうです。場所が変わっても働きつづけるため、手に職をつけたいと靴職人を目指しますが、機能面の制約が多く断念します。その後、香川県へ引っ越し、「香川県漆芸研究所」で5年間学ばれました。金沢に来てからは日本伝統工芸展だけでなく、現代アートやオブジェの在り方を学び、アート作品を作っています。現在は、国内外のコンペティションやアートフェアに作品を発表しています。最近では「ロエベクラフトプライズ2019」のファイナリストに選出されています。
なぜ、工芸にたどり着いたのかというと、小学生から続けていた書道で篆刻(てんこく:石や木などの素材に篆書と呼ばれる文字を彫ったもの)がきっかけだそうです。
卯辰山工芸工房では多くのチャンスをもらえます。18~35歳の男女が対象なので出産育児を望む場合は作家としてのチャンスとタイミングが重なってしまいます。
最近読んだ平野ノラさんのオフィシャルブログにあった「静岡第一TVのレギュラー番組が妊娠を機に終わってしまいました 育休なんてない世界ですから仕方ないですが――」
という言葉に共感するところがあります。という言葉に共感するとことがあります。と率直に話してくださいました。
2人目は金工作家 郭 宜瑄 (カク ギセン) さんです。郭さんは、2019年5月にワーキングホリデーを利用し、京都の清課堂(せいかどう)で、錫(すず)や銀など金属工房、茶道具を作る研究とアルバイトをされていました。さらに技術を磨くため、金沢卯辰山工芸工房を選び、現在学ばれています。
卯辰山工芸工房を選んだ理由は、新しい文化と古い伝統が織り交ざったまちに魅力を感じたこと、金沢文化を学んで自分の作品に反映させたいという思いがあったからだそうです。
金沢卯辰山工芸工房でのヒアリングを通して、地元に留まらず様々な地域から「金沢卯辰山工芸工房」に集結しており、これまで学んできたことやその人の感性が融合、更新され伝統が作られていくことが分かりました。金沢市は工芸に限らず、現代アートなどにも力を入れているまちとして周知されていること、その現状があるのはこれまで作家のサポートを手厚く行ってきたからこそであると感じました。
「金沢卯辰山工芸工房」でのヒアリングで金沢の工芸から現在の活動まで丁寧に教えてくださった川本さん、研修者のリアルを率直に話してくださった中田さん、郭さん、本当にありがとうございました。
ここからは今回のヒアリング全体を振り返ります。このプロジェクトに参加したことによって、工芸作品を最終的に手に取る消費者の視点だけでなく「作り手」の視点について深く知ることができました。
11月17日にヒアリングを行った、「赤地陶房」の赤地径さんのように、普段使いの雑器をつくる人がいる一方で、卯辰山工芸工房の研修者の方々のように、伝統工芸の技術を使いながら「見せる」作品をつくり、世界を目指す人がいることが分かりました。中には中田さんのように一度就職してから工芸にかかわる人もいらっしゃいました。
このように、それぞれのスタイルで工芸の技術を使いものづくりに向き合っていました。自身がこれから社会に出て働いていく中で、新たな分野にチャレンジしたり新しくやりたいことを見つけてそれに打ち込んだりすることは不可能ではないのだと希望が持てました。
金沢プロジェクトは始まって1年目でしたが、オンラインも活用しながら濃い内容の活動ができ、たくさんの成長の機会や発見を頂けたことがとても嬉しいです。
写真1:金沢卯辰山工芸工房正面出入り口前(左から、黒保、川本敦久さん、近藤)
出所:金沢工業大学 大砂雅子 教授 撮影
金沢のクラフトに関するご講義から、工芸作家様へのご紹介、アポイント取得、ヒアリングご同行に至るまで、たくさんのご協力をいただきました、金沢工業大学、大砂教授及び金沢クラフトビジネス創造機構、新木伊知子専務理事・事務局長、本当にありがとうございました。
現代教養学科4年 近藤菜々子(こんどう・ななこ)