地域貢献活動
【現代ビジネス研究所・研究助成金採択プロジェクト】燕三条地域の加工技術とグローバル優位性~産業集積を支えるものづくりのDNAを探る
【2019年度調査報告】世界の医療機器産業を支える台湾ハイテククラスター~その7
②台湾と燕三条地域で連携する医療機器エコシステムの構築
燕三条地域の産業集積と台湾の医療機器クラスターが連携するにあたっては、まずは、台湾を始めとした、グローバル顧客の市場ニーズを把握する必要がある。台湾企業側のニーズも様々であるため 、既に台湾企業とビジネスを行っている燕三条企業やジェトロなどの海外展開支援機関などの協力を得ながら、例えば下記の事例を参考にしながら、個別ニーズに応える形で連携の切り口を探ることが重要である。
【日台アライアンス事例】:燕三条と台湾の連携による、医療機器・福祉分野の連携モデル
A.【OEM対応型】連携モデル
a)加工メーカーによる、台湾医療機器メーカーからのOEM共同受託事業
・燕市商工会議所にて「医療機器研究会」が立ち上がっており、医療機器メーカーに対し、燕市企業が共同受託を行うスキームが出来ている。
・燕市の医療機器研究会の会員企業とのマッチングを想定した場合、台湾側エンドユーザーとしては、台湾の研究機関や欧米に輸出を行っている医療機器メーカーが想定される。
b)工業組合・商工団体等による、台湾医療機器メーカーへのモジュール提案モデル
・共同でOEM受注を行うビジネスモデルでは、日本の大手企業との関係が、台湾大手企業や欧米企業にシフトするだけであり、地場産業の高度化は望めない。
・台湾医療機器メーカーへの売り込みに際して、まずは台湾側ニーズを探る必要があり、地場の工業組合や商工団体がチームとなって、医療機器に組み込みできるような部品及びモジュールの企画開発を行い、台湾企業への共同提案ができることが理想である(図5)。
・台湾医療機器メーカーや、その先の欧米系医療機器メーカーへの納入に繋げられるようなスキームを検討するためには、地場企業の技術の強みを適切に把握し、どのような医療機器及びモジュール、部品の提案が行えるかを明確にする必要がある。
B.【海外市場拡販型】連携モデル
a)燕三条の厨房設備、食器メーカーによる、台湾医療・福祉関連業者への拡販
・燕三条企業の多くは、既に台湾企業との取引を積極的に行っており、台湾に代理店を有する企業も多いため、既に一般市場の市販ルートや調達ルートは確保できている。
・一方で、台湾の医療・福祉関連ルートへの販路が限定的であるため、台湾の医療機器協会の協力を得ながら、新たな販路拡大を目指す。また、欧米企業向けや新興国向けの医療・福祉関連ルートについても、台湾企業のネットワークを生かして、拡販を行う。
・また、華人向け、新興市場向けの越境ECコマース事業についても、台湾企業との協業の可能性を探る。
b)台湾企業の製品開発力を活用した、新市場向け製品開発
・台湾及びASEANを始めとした新興国市場では、日本で企画設計を行う製品が、コスト面及び仕様面で競争力が低いという懸念がある。
・そのため、台湾企業のイノベーション能力や新興市場向け製品開発能力を生かした協業により、新しいビジネスチャンスが生まれる可能性がある。
・日系企業は、新興市場においては、高付加価値品質の製品に特化した販売戦略を取ることが多いが、台湾企業と連携した汎用品開発により、ボリュームゾーンと高品質製品の両取りが可能となる。
以上の連携スキームなどを踏まえ、燕三条地域が主導となり、医療機器のグローバルサプライチェーンを構成するには、台湾をパートナーとした医療機器のエコシステムを構築することが重要である。まずは、台湾側が保有する欧米医療機器メーカーの受託加工ニーズを把握し、台湾と燕三条において製造、加工の分業を行う。そして、欧米企業向けの医療機器プラットフォームを構築することで、医療機器のグローバルサプライチェーンに繋がるエコシステムが創出されれば、燕三条地域の高付加価値産業育成への布石となろう。