地域貢献活動
【現代ビジネス研究所・研究助成金採択プロジェクト】燕三条地域の加工技術とグローバル優位性~産業集積を支えるものづくりのDNAを探る
【2019年度調査報告】世界の医療機器産業を支える台湾ハイテククラスター~その5
4.日台医療機器プラットフォーム構築と産業クラスター連携の可能性
台湾は、戦前日本の統治下にあったことから、日本とは人、物、資金の移動が活発であり、台湾との交易は移出、移入とされた時代もあった。かつては、日本企業が安価な労働力を求めて、また近年ではグローバル優位性を有する台湾企業とのビジネスの必要性から、日本企業の台湾への投資は、1960年以降半世紀以上にわたり、継続的に行われてきた。投資金額ベースでは欧米メーカーの工場投資等、大規模投資を行う国が上回るものの、投資件数ベースでみると、日本は台湾へ最も投資を行っている国の一つである。
こうした状況下にも関わらず、1972 年 9 月 29 日に日中国交正常化に伴い、台湾と日本は断交となり、日本と台湾には貿易や投資に関する相互協定が存在していない時代が長くあった。台湾のWTO加盟等の国際的スキームが整備される中、日本政府として日本企業と台湾企業と連携の枠組みが議論されるようになった。こうした中で、在台湾の日本企業保護を目的にした投資協定が議論されるようになり、2011年9月に「日台民間投資取決め」が締結され、台湾に投資を行った日本企業は、台湾企業と同等の権利や待遇を享受できることとなった。さらに、在台湾法人に勤務する日本人駐在員等の二重課税を回避する目的で「日台民間租税協定」が締結され、台湾でビジネスを行う法人や従業員が、税務当局からの過剰な指摘を受けることなく、安心して台湾での勤務や事業を行えるようになった。
その後、(公財)交流協会と亜東関係協会が中心となって、台湾における日系企業の利便性を図るため、また、日本と台湾における貿易経済交流の利便性を図るために、業界団体等の意見を参考にしながら、日本と台湾における分野別「共通認証」制度の議論を行ってきた。外務省や経済産業省では、電気製品分野における適合性検査の共有化を行う目的で、「電気製品分野の日台民間相互承認取決め(日台MRA)」を締結した。
2015年6月に、厚生労働省は「国際薬事規制調和戦略」を、独立行政法人医薬品医療機器総合機構は「 PMDA 国際戦略 2015 」をそれぞれ策定し、日本の薬事規制の信頼性構築に向けて、日台間の交流活動を進めてきた。こうした交流活動の成果として、2018年11月30日付で、日本と台湾の間で「医療機器品質管理システムに関する協力覚書」が締結されることとなった。これに伴い、企業が台湾に医療機器を輸出する際に提出が求められる品質管理システムの資料が軽減されることとなり、台湾において、日本で開発された医療機器へのアクセスが迅速化され、日本の医療機器の輸出促進や台湾の保健医療の質の向上に貢献することが期待されている。
厚生労働省は、平成29年度「開発途上国・新興国等における医療技術等実用化研究事業」にて、達成すべき成果目標(KPI)として、2020年に医療機器の輸出額を倍増させ、2030年に日本の医療技術・サービスが獲得する海外市場規模を5兆円とする計画を示している。厚労省では、途上国等における保健・医療課題を解決しつつ、日本の医療技術等を国際展開していくためには、途上国等のニーズを十分に踏まえた医療技術・医薬品・医療機器の開発(有効性の確立等)を行うことが必要であるとし、新興国等への医療技術・サービスの国際展開を目指すために、ASEAN等のニーズ把握が可能な海外企業との連携を想定している。
台湾では、30年前より、ASEANにおいて医薬品の卸売りを行う企業が多数あり、医療機関や医薬品卸業者に多くの販売チャネルを持っているため、台湾企業のASEANにおける販売ルートを生かした日本企業との協業可能性は高いだろう。