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【現代ビジネス研究所・研究助成金採択プロジェクト】燕三条地域の加工技術とグローバル優位性~産業集積を支えるものづくりのDNAを探る

【2019年度調査報告】世界の医療機器産業を支える台湾ハイテククラスター~その4

2.台湾の医療・福祉機器における産業動向

①台湾の医療・福祉機器市場の概略

 

台湾バイオテクノロジー及び健康福祉産業の動向として、2016年の売上高は4,471億台湾ドルに達した。内訳は、医療機器1,410億台湾ドルで6.0%の成長率、製薬が802億台湾ドルで3.9%の成長率、バイオテクが938億台湾ドルで6.1%の成長率、健康福祉が1,321億台湾ドルで7.5%の成長率にあった。BMI(2017)、IEK(2017)によれば、2016年台湾のバイオ医療産業の売上高シェアとして、医療機器産業31.54%、健康福祉産業29.55%、バイオテクノロジー産業20.98%、製薬産業17.94%となっている。

 

台湾の医療機器産業は、2006年時点で製薬産業を追い越し、生物医学産業をリードしている。一方で、台湾の医療機器・福祉機器の産業動向は、2016年の売上高は医療機器が1,410億台湾ドルで前年比6.0%の成長率、福祉機器が1,321億台湾ドルで前年比7.5%の成長率となっている。医療機器は輸出の割合が高く、福祉機器は種類によって台湾市場向けに特化するケースもある。

 

工業技術研究院IEK(2017/05)によれば、台湾の医療機器メーカーは現在1,073社まで増加しており、血圧計と医療用スクーターは、世界シェア第3位となっている。他製品については、平均市場シェアが5%未満と低いが、台湾の医療機器メーカーの平均売上総利益率は約35.5%と高く、産業活性化に貢献している。台湾の医療機器産業における従事者数は約39,500人で、研究開発費が売上高に占める割合は約3.0%となっている。台湾医療機器メーカーの販売先の比率としては、海外市場向けが圧倒的に多く65.12%を占め、台湾市場向けが25.58%、同じシェアである割合が9.30%となっている。これは、台湾の医療機器メーカーの多くが、海外医療機器メーカー(主に欧米・日本)のODMを担っているためである。

 

台湾で主に製造されている医療機器としては、大きく分けて歯科用、整形外科、美容外科用、その他にカテゴライズされる。歯科用としては、医療用チェア、歯科用インプラント、臨床トレーニングシステム、歯科用ハンドピース、歯科用X線装置、バイオ医学用セラミックス、歯列矯正器具、超音波オステオトーム、歯科用CT、セレック3Dがある。整形外科用としては、整形外科用インプラント、脊椎固定装置、骨セメント等である。美容外科用としては、コラーゲン、外科用レーザー、内視鏡手術用鉗子、ウンドケアなどがある。その他、透析器、MRI、診断用キット、注射器、鍼治療用針、診断用装置が製造されている。

 

台湾医療機器協会によれば、台湾医療機器産業の強みとして、豊富なOEM生産経験と管理能力を有し、迅速な組み立てとフレキシブルな対応が可能であるという。また、台湾にはICT産業技術が集積しており、部品や部材のサプライチェーンが存在していることも利点である。さらに、医療機器のキーテクノロジーは精密加工技術にあり、台湾には精密加工業者の集積がある。台湾では国際医療サービスが優れているほか、全民健康保険により蓄積された医療データベース にある膨大な臨床データの活用等、臨床分野における優位性も高いと言える。こうした、行政主導の産業育成体制と市場化を主体とした研究機構の存在により、台湾の医療機器産業は、分野を跨ぐ学際的な新領域における実用化など、製品イノベーションが行いやすいことも、台湾を活用するメリットと言える。新製品の開発ニーズは依然として高く、また中国・他の新興成長市場に合致した製品開発ニーズが高いと考える。

 

一方で、台湾医療機器産業の弱みとして、クラス1やクラス2の一般医療機器に過度に集中しており、高度医療機器への飛躍が難しい 。また、医療機器分野においては、専門家や研究者の層が薄いことから、学術研究界と産業界の連携が整わない分野では、学際的な人材に乏しくなるケースもある。また、高度医療機器製造には、製品検証と臨床試験のプラットフォームの整備が必須であり、グローバルにおける医療サプライチェーンでのブランド競争力があるとは言えない。現在のところ、先進国での台湾医療機器メーカーの製品や部品の市場シェアは低く、台湾には.産業全体をリードし、台湾の医療産業を担うような大手医療機器メーカーが存在しない。そのため、アジアの周辺国が同様に医療機器産業を発展させると、グローバル競争力も低くなり、新規参入のハードルが高くなるというリスクもある。