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【現代ビジネス研究所・研究助成金採択プロジェクト】燕三条地域の加工技術とグローバル優位性~産業集積を支えるものづくりのDNAを探る

【2019年度調査報告】世界の医療機器産業を支える台湾ハイテククラスター~その2

② 医療機器市場の概要と台湾の医療機器クラスターの位置づけ

 

BMI(2017)、IEK(2016、2017)、ジェトロ(2017)によれば、世界の医療機器市場の傾向として、高品質な医療サービスの需要が高まっており、主に先進国の少子高齢化が産業の成長を後押ししている。世界医療機器市場は、約40兆円規模とされており、2016年の医療機器の主要市場の割合は、米国43.9%、日本8.9%、ドイツ6.9%、中国5.6%、フランス3.8%、その他31.7%となっている。一方で、台湾の医療機器市場規模は、2019年に4328億円に達しており、特に、コンタクト、血糖測定器、車椅子などの輸出が好調である。高齢化の進行で杖や車椅子、家庭用のヘルスケア製品も多くつくられており、台湾当局は更なる輸出拡大に向けて後押しを行っている 。

 

台湾の医療機器に関しては、1990年代までは欧米からの輸入品が多かったが、戦前日本帝国大学医学部に留学していたエリート層が、戦後は医学博士を米国で取得するようになると、米国帰りのドクターが使い慣れた米国の医療機器を導入するのは当然の流れであった。台湾では、米国のFDA(厚生労働省許認可)取得を行っている医療機器については、台湾での市場化テストや適合性検査を除き、基本的にはFDA取得時の臨床データ等を使用できるなど、輸入障壁が比較的低い 。そのため、ある日系企業は、台湾でOEM製造した医療機器を、現地でFDAの認可を取得し、米国市場に輸出している。

 

近年、台湾の産業政策の成果もあり、特に2000年以降、台湾の医療機器部品の製造技術は向上し、米国の医療機器メーカーのOEM受託を行う企業が増加している。また、欧米医療機器メーカーのOEM受託品のみならず、台湾において医療機器製品の開発も活発化してきた。医療機器製品の開発傾向としては、マスク、ガーゼ、テープ、手袋等の医療用消耗品からスタートし、医療用ベッドや手術台、照明等の医療用備品や設備へと展開している。
在宅介護用医療機器分野でも製造が行われており、体温計製造から血圧モニター、血糖値測定器製造へと発展や、医療用コットン製造から手術用ガーゼ、外科用テープの製造への展開、介護ベッド製造から物理療法用機械、インプラントへの展開等、製造技術の高度化や応用等による製品ラインナップ拡大の傾向も見られる。

 

こうした、政府や業界団体、企業のイノベーションへの努力が実を結び、前項①に述べたような台湾のハイテククラスターは、医療機器の産業クラスターへと転換を遂げた。下記の通り、現在台湾には、主に4つの医療機器クラスターが存在し、台湾企業や外資系企業の集積が見られるようになった。

 

*新竹「ハイエンド医療機器・新規研究開発産業クラスター」
体外診断/医学映像関連企業67社
*中部「介護用品・低侵襲手術産業クラスター」
補装具/手術器具関連企業 台中市154社、彰化県72社
・台中に「中部医療機器新興多領域統合プラットフォーム」(PIDC)を設置
産学官研に医療機関を統合、高分子医療機器(Advanced Polymer Medical Devices)発展に向けた産業クラスター
*台北「医療電子機器・医療情報研究開発産業クラスター」
医療電子機器関連企業 台北市153社、新北市299社
*南部「整形外科、歯科医療機器産業クラスター」
整形外科、歯科医療機器関連企業 台南市71社 高雄市66社