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【現代ビジネス研究所・研究助成金採択プロジェクト】地域の加工技術とグローバル優位性(金沢の地場産業調査)

『2020年 金沢の伝統工芸プロジェクト始動!!!』

\ 今年から、金沢市も研究対象に加わりました!/

 

現在、金沢チームでは「金沢の伝統工芸」にテーマを絞り、伝統産業の現状について調査を進めます。その最初のステップとして、8月17日に、金沢工業大学の産学連携室 大砂雅子教授とのオンライン対談が実現しました。

 

大砂教授は、ジェトロ(独立行政法人貿易振興機構)で、初めての女性海外事務所長として働きながら仕事と子育てを両立させ、現在は、地元である石川県に生活拠点を移し、多数の企業を支援されている「スーパーウーマン」です。この対談では、労働、ジェンダー、環境問題など、多彩なフィールドで活動されている大砂教授に、我々が調査をするなかで抱いた問題意識を投げかけ、売り手と消費者を繋ぐプロの視点からフィードバックをいただきました。

 

写真1:金沢工業大学 産学連携室 大砂雅子 教授

出所:根橋玲子研究員 撮影

 

≪今回のキーワード≫  金沢工芸アクションプラン、職人減少、継承者教育、6次産業、対日投資、販路拡 大、食文化、農業AI導入

 

 

〈伝統の現代化〉

 ~伝統や文化はいかにしてブランディングしていくべきか?~ 

 

 職人の方たちは、新型コロナウイルスの感染拡大による観光客減少などの影響を受けて、「売れるものをつくる」必要に迫られ、「マーケティング意識をもつ重要性」がより浮き彫りになりました。伝統工芸品は、かつて「つくりたい人がつくり、買いたい人が買えたら良い」とされていましたが、文化・生活様式が変わり、消費者ニーズが多様化する現代では、そのようにはいかないようです。

 

調査のなかで、つくるだけでなく、市場ニーズを把握し、変化を試みる職人や、職人を支えるための繋ぎ手が数多く存在していることを学びました。職人の担い手不足が問題視されるなかで、職人の後継者教育においても、技術だけではなく「自力で生計を立てるためのマーケティングのノウハウ」の継承も重要だそうです。 

 

世界的に知られる地域のブランド力があり、独自技術を持つニッチ企業が多い金沢では、職人や自治体がブランド総力をあげてモノを売る前向きな活動が盛んに行われています。今注目されているのは、金澤町家(まちや)保存の取り組みにより、町家(古くは江戸時代の建物)を、ITの拠点・カフェ・居酒屋など今風にリノベーションし、その施設で九谷焼(くたにやき)などの伝統工芸品を扱うコラボレーション企画などです。

 

私たちはこうした、「今時の生活様式を維持しながら、伝統のなかで新しいモノを創り、販売する」という新しい金沢の形、また職人の新しい動きや新規参入者に注目して調査を進めたいと考えています。

 

 

【 職人に求められるのは、〈異文化を理解する心〉〈多様性〉

 

大砂教授から、石川県の伝統産品のアメリカ・台湾・韓国への進出支援、また同じ北陸の富山県の伝統産品の経営支援の事例を伺いました。各地域によって、趣向やニーズは多様で、日本のモノがそのまま現地で受け入れられるとは限りません。現場の声を聞いて、国内外問わず、地域ごとのマーケティングが不可欠であることを再認識しました。

 

社会全体がグローバル化・均質化の一途を辿るなかで、職人が生き抜くには、「技術を、現場で、いかに上手く活かせるか、創造する力」が求められます。そのため、これからの職人は、技術だけではなく、「異文化に寄りそう心」や「多角的な視野」といった、より開かれた知見をもつことが必要だと教授は考えておられます。

 

 

「農業のAI活用」についても話題になりました。

 

伝統工芸と同様、後継者不足が深刻化している農業。農家もまた、高齢者が多数であり長年の経験を頼りに作業を進める作業が多く、日々移り変わる天候を気にしながら1日中農業のことを考えなければならないことから、子供に継がせたくないという農家が増えています。金沢工業大学では、水田にセンサーをつけて、温度・湿度を読み取り、AIの予測分析によって農作業のタイミングを計る研究が行われています。このように、「感性とAI」を上手くマッチさせる成功例をアピールしていくことで、若い農家や後継者が少しでも増加することに期待していると教授は仰います。つまり、農業も「現代化」していく必要に迫られているのです。

 

 

【感想】

 対談のなかで、「私は、仕事と家庭両方を選ぶ」という教授の言葉が印象的でした。

教授は、「金沢 カッコいい女子の会』の代表という顔もお持ちで、男性相手に、女性の働き方について講演を行なうなど、「まだまだ女性に厳しいビジネスの場を変えたい」という考えのもと、頑張る女性たちを勇気づけています。

 

 我々、女子大生にとって「グローバルで活躍する女性」の理想像ともいえる教授のビジネス観や知識を間近で吸収できる貴重なチャンスを有意義なものに、そして、これを機に、改めて地元の土地のよさやモノづくりの本質をじっくり見極め、地元の活性化に何か手伝えることはないか、我々が「今できる」ベストな方法を模索していきたいと考えています。

 

国際学科 3年 黒保奈那(くろやす・なな)